1930年(昭和5年)に竣工(しゅんこう)した甲子園ホテルは、太平洋戦争の激化により、わずか14年でホテルとしての役目を終えた。
その後、海軍病院に転用され、戦後は米軍将校の宿舎として進駐軍に接収。米軍の引き揚げ後も、ホテルとして営業再開されることなく、大蔵省の管理となった。
やがて、地元の大学が譲り受けて修復工事を行い「甲子園会館」として再生。ホテルという空間ではないがその精神は受け継がれ、「もてなしの空間」として人々に愛されている。
2007年には、国の近代化産業遺産、2009年には、国の登録有形文化財に登録。誰もが認める代表的な近代建築物である。
その設計にあたったのは、帝国ホテルを手がけたアメリカの建築家、フランク・ロイド・ライトの愛弟子である遠藤新(えんどうあらた)。ライト的ではあるが、遠藤の思想が各所にちりばめられている。
番組では、現存する設計図や建築当初の古い写真をもとに、甲子園ホテルの魅力を建築構造学や建築美の観点からも掘り起こす。そして、日本近代建築に大きな影響をもたらしたライトと遠藤という2人の建築家の「国境を越えた師弟愛」を中心に、人間ドラマを追う。
関東大震災に耐えたライトの帝国ホテルと、阪神淡路大震災に耐えた遠藤の甲子園ホテル。
その耐震性能の高さは、設計者たちのホテル建築にかけた思いがつまっていた。
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